コラム


 

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by 安藤弘志

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オヤジのうた曲名リスト



VOL.827 * 2023/12/30


「朝の経済情報」

早起きの習慣については以前も何度か書きましたが私の朝の情報収集の定番を
ここで紹介しておきましょう。最初にちらっと見るのはCS放送の「CNBC」ですが、
アメリカ東海岸の冬時間の場合日本の6時、夏時間だと5時前後のNY市場終値の
様子を見ます。6時半にはNHK総合でニュースの項目紹介と「おはBIZ」を見て
その前後にBSテレ東の「モーサテ」も内容によっては注目します。朝日新聞の朝刊
を並行して読みながら7時15分になって、NHK-BSの朝ドラ再放送に切り替えたら
娯楽と朝ごはんを楽しむ時間です。今は安藤百福をモデルにした「まんぷく」が
再放送されていますが、戦後のGHQの横暴とそれに逆らえない日本の官僚の様子が
沖縄の辺野古埋立工事代執行との類似点として改めて考えさせられます。
今年は芸能界から自民党まで長年まかり通っていた不正の隠蔽が裁かれる流れに
なっていて喜ばしいことです。あきらめずに耐え抜いて声を上げた皆様への
感謝と応援を微力ながらお伝えします。日々の暮らしの中でもこの「良き流れ」に
寄り添った企業を選んで消費や投資をしていきたいものです。投資といえばNISAの
充実にあわせて新規で株を買いたい人へ一つ忠告。ことし日経平均が28%も
上がったのは過去を見渡してみれば「異常」な上げで、株価の上下が気になる人は
しばらく「買い」は見合わせるのが得策です。手持資金に余裕があり長期保有で
配当を狙うのなら権利付日(3月末が多い)までの間で下げを待つのが良いかと。



VOL.826 * 2023/12/20


「熊本空港駅は諦めた」

前回に引き続き鉄道がらみの話題です。蒲島郁夫県知事が任期での引退を表明して、
熊本のメディアでは後継知事に何を期待するかの話題が多くなりました。中で立憲民主
のコメントの中に「空港アクセス鉄道は採算性に難」との意見がありました。私としては
以前の記事で肥後大津分岐を主張し、現実もその流れになったこともあり何でだろうと
疑問に感じました。ルートを地図に引いてみると、工事が容易な大廻りのルートでは、
所要時間が掛かりすぎ、最短に近いルートにすると長大トンネルが必要で莫大な工事費
が予想されます。しかも豊肥線が単線のため速度アップに限界があり、バスとの比較での
利用価値が出せない恐れに気が付きました。空港鉄道はやめた方がよさそうです。
今日のニュースでは途中の新駅の計画が出ました。おそらくTSMC工場関連の計画道路
に繋ぐのでしょう。停車駅が増えればますます空港鉄道の所要時間は伸びてしまいます。
最も現実的な空港アクセス改善は、国体道路東西線が高速をまたいだ先の戸島町から
分岐して、高遊原ゴルフ場北側の山道を改良してセミコンテクノパークそばから空港入口
交差点に繋ぐ「第3空港線」の建設が良いかもしれません。空港出口の信号を直進
する第三のルートです。産業道路の渋滞が問題ですが、渡鹿で降りてJR豊肥線の
東海学園前駅で乗り換えられるバスルートを整備するのも一案かもしれません。



VOL.825 * 2023/12/09


「東九州新幹線」

隠れテッチャン?の私の嗜好を見透かして常日頃から鉄道関連のニュースが
ネットに表示されがちなのですが、このところ「東九州新幹線」の話題がよく出る
ようになりました。ついに私の故郷宮崎県にも…と、期待するかといえば全くNOです。
地元の首長などは立場上推進する姿勢を取るしかないでしょうが、内心それほど
期待はないでしょう。地形的にも採算的にも困難な代物がたとえ出来たとしても
自分の寿命の尽きるころの話です。そもそも並行在来線の分離、第3セクター化が
必要な所の新幹線は作るべきではない気がします。人口減少の時代にあっては
維持に費用と手間のかかるインフラは厳選したうえで大切に使うべきでしょう。
新幹線は需要の多い「幹線」以外にはふさわしくありません。いしいひさいちの
随分昔の作品にローカル線まで新幹線になる架空の未来を描いた漫画がありました。
田園の中の高架線を二両編成の「ひかり号」がトコトコと走って、確か駅の名前は
「在所」とかになっていました。土建政治を見事に皮肉っていて笑ったものです。



VOL.824 * 2023/11/15


「時は流れる」 黛ジュン

NHK-FMの「歌謡スクランブル」黛ジュン作品集でものすごく久しぶりに表題曲を
耳にしました。この曲を聴いていたころの情景の記憶を呼び覚ますと中学生時代に
暮らしていた街並みが浮かびました。調べてみると1970年の後半に流行っているので
まさしく私が15歳の坊主頭の少年だった時です。とにかく曲調がイイ。川口真の
作曲ですが、Aメロのマイナーの部分とBメロで転調したメジャーの比率が当時の
中学生の私の気分と合致して、なおかつ「エキスポ’70大阪万博」で盛り上がった
時代の雰囲気を正しく象徴していたのです。アメリカから月の石がやって来たり、
世界の最先端が身近に感じられ日本の自動車や家電が世界に通用するようになった
感激もあった時代です。良くも悪くも資本主義が輝いていた時代のシンボルが万博
だったのかもしれません。♪ふたりの祈りむなしく 時は 時は流れる…



VOL.823 * 2023/11/06


「牛虎熱戦に感謝」

ゆうべの日本シリーズ第7戦は、夜の10時前に阪神タイガースの勝利で終り、あの
1985年の吉田監督時代の大騒ぎ以来の2度目の日本一ということで目出度いことです。
7番勝負で3勝3敗同士の第7戦となれば、ほんのわずかな成り行きで勝敗が分かれる
ことになりがちで、昨夜も3回までは投手戦だったのが4回表に宮城投手が一発を浴びて
たまたま走者が二人いたために試合の形勢が大きく阪神に傾きました。囲碁将棋の
TV中継では近年AI判定による予測勝率が画面に表示されますが、もし野球であったら
50%ずつの表示が突然阪神の75%くらいに大きく動いたことでしょう。そういえば先日の
囲碁名人戦7番勝負でも第6局二日目の夕方に突然表示が動いて形勢が変わり、
芝野虎丸が井山裕太を破りました。「虎」の勝利が暗示されていたのかも知れません。
阪神の勝因としては第7戦になって青柳という強力な投手を初登板させられる
分厚い戦力を築いていた点でしょう。この分で行けば戦前の大阪タイガース時代
以来の連続優勝もあるかも知れませんね。熱戦を楽しんだ一週間に感謝します。



VOL.822 * 2023/10/23


「優勝セール雑感」

いつも利用するマックスバリュ九州の店舗が今日は食料品5%引きセールでした。
何の記念かというと、プロ野球パリーグの日本シリーズ進出チーム決定の翌日から
二日目という訳のわからん口実ですが活用することとして米など色々買い込みました。
宮崎産コシヒカリの新米がもう安く買えるのは九州人の特権でしょうか。そもそも
百貨店が系列の球団の優勝決定に合わせるのが優勝セールの始まりでしたが、
九州ではイオンが(やがて広島のイズミも九州の店は)ホークスに便乗して優勝セール
をやりだし、負けても残念セールをやり、ついに今年は決定戦進出を逃した後も
こじつけのセールをやっていただけるとは有難いことです。消費者としては本当に
安くて買う価値のあるものを選んで利用すれば良いのでしょう。オリックスと阪神の
日本シリーズはそれぞれの本拠が一本の電車で結ばれるのでなんば線シリーズと
呼ばれますが、これの本家はMLBのサブウェイシリーズでニューヨーク市営地下鉄で
結ばれる球団同士の頂上決戦が発祥のようです。1964年には日本でも大阪市営
地下鉄で結ばれた阪神と南海が戦い、御堂筋シリーズと呼ばれました。厳密には
本拠地球場があるわけではない阪神の梅田は始発駅があることからの命名です。
ほかに電車つながりのシリーズが出来るとすれば、幕張の千葉ロッテと東京の
水道橋や信濃町が最寄り駅の巨人/ヤクルトが対戦すれば総武線シリーズですね。



VOL.821 * 2023/09/26


「ボヘミア・アフター・ダーク」 ジョージ・ウォーリントン

阪神タイガースにかまけて取り上げるのが遅くなってしまいましたが1955年の
9月9日にニューヨークのジャズクラブ「カフェ・ボヘミア」でライブ録音された
"George Wallington Quintet at the Bohemia"というアルバムを思い出しました。
実は大友良英氏のNHK-FM「ジャズ・トゥナイト」という番組で、名盤誕生日という
企画があって去る9月9日に "Elvin Jones Live at the Lighthouse"が取り上げ
られたのです。1972年に西海岸で録音されたライブ盤はジャケットから「サカナ」
と呼ばれジャズマンの間で話題になったようですが、私にとっては自分の生まれた
年ということもあり「ボヘミア」の方をやって欲しかったのが本音です。こちらは
長らく幻の名盤扱いされていたようなのですが、私の学生時代にアーチ形の
門の写真を使ったジャケットで再発売されてジャズ喫茶でよくかかったものです。
若き日のジャッキー・マクリーンとドナルド・バードが端正なピアノトリオと組んで
テーマとアドリブがかみ合った演奏の数々です。大友良英氏の解説が聞きたかった
のは特にB面二曲目の"Jay Mac's Crib"で、ドナルド・バードがスタンダードの
「朝日の如く爽やかに」のテーマを解体した料理法を音楽的に解いて欲しかったです。



VOL.820 * 2023/09/15


「深呼吸して」

岡田監督率いる阪神タイガースは、九月に入ってから負けなしの11連勝という
驚異の数字で昨夜セントラルリーグ優勝を決めました。甲子園での阪神巨人戦
という舞台での劇的勝利です。一二戦での完封勝ちとは少し違って、さすがに
昨日はアレへの意識も高まり救援投手が巨人に追い上げられます。私の頭に
浮かんだのは同じ甲子園で逆に巨人が優勝を決める日に起きた出来事です。
調べてみたら2002年の9月24日ですね。マジック1の原巨人は試合中に2位の
ヤクルトが負けて優勝が決まるも、自軍は阪神に追いつかれて延長戦になります。
12回裏にサヨナラ暴投で阪神が勝つ幕切れで留飲を下げた阪神ファンがひとしきり
六甲おろしで盛り上がった後に時間をおいて原監督の胴上げとインタビューが
行われるという前代未聞の展開になったのでした。たぶん原監督はあの時の
屈辱をリベンジするために、何としてでも勝ちたかったと想像されます。しかし、
阪神のクローザー岩崎が同期の故横田選手の力も借りて一点差逃げ切りました。
TV中継をしていたGAOLAの中井雅之アナは解説の糸井嘉男と共に涙で
鼻声になりながらもアナウンスしました。「阪神ファンの皆さん深呼吸してください
そして頬っぺたをつねってみてください。夢じゃないんだとわかるでしょう!」



VOL.819 * 2023/09/12


「過ぎし夏の思い出」 フランク・シナトラ

ジュール・スタイン作曲のスタンダードに私が初めて接したのは、ジャケットに切欠き
のある輸入盤で手に入れたナンシー・ウィルソン/ジョージ・シアリングのLPに入った
ナンバーでしたが、ジャズ初心者の学生にとっては他の有名曲の数々に目が行って
さほど印象に残りませんでした。それが人生の秋になって味わって聴くと、なんとも
たまらない一曲だったのですね。愛する人と過ごした夏の日々の出来事が次々と
提示されたあとに、色づく木の葉のように変わってしまった互いの気持ちが、忘れられ
ないけれど戻れないこともわかったうえで懐かしんでいます。メロディーラインで印象
ぶかいのは何といっても三小節目の「レドソミレドシソ♭シー」のところでたまらなく
切なくさせてくれます。歌詞の中に「冬のあいだずっと思い出すだろう」とあるので、
夏の終りの歌というよりもウインターソングに入っていたりもします。



VOL.818 * 2023/08/30


「熊本、神戸を破る」

今年は年末に日本のサッカーチームの頂点を決めるJFA天皇杯は、今夜
準々決勝が各地で行われました。夕方のKABローカルニュースで熊本のスタジアムに
雨の中集まってくるサポーターの様子が報じられましたが、対戦相手がJ1の強豪
ヴィッセル神戸だけに正直期待はしていませんでした。先に始まったプロ野球の中継を
しばらく見た後、ふと気になってBS1の熊本神戸戦に切り替えたら1点リードで後半を
戦っていてびっくり。しかも互角以上にボールを支配しているじゃありませんか。しかし
本気で期待しはじめた後半42分にGKが早いセーブを外されて同点ゴールを被弾。
延長戦に入った時には「善戦」で満足かなとも思いましたが、30分間の延長戦を
DF酒井を負傷で欠き残り十人で守り切った時には「ひょっとすると」の気持が湧きます。
PK戦は両者おなじ〇×を重ねたのちキーパー田代が自身で蹴りこんで、最後は
キャプテン平川が決めて勝利の雄たけび。全員へとへとの満身創痍で成し遂げた
ジャイアントキリングに感動しました。準決勝は10月らしいですが、心配なのは
ロアッソ熊本のJ2リーグ戦の成績で、負けが込んで現在20位。こちらも最後まで
もつれて入れ替え戦で劇的勝利なんてことになりそうな予感もします。



VOL.817 * 2023/08/07


「夏色の想い出」 チューリップ

ピーター・バラカンさんの朝のFM番組がここしばらく、50年前の1973年を取り上げる
のにちなんで、和もので一曲紹介させてください。サビから始まる出だしのフレーズが
♪きみをさらってゆく風に なりたいな〜きみをさらってゆく風に なりたいよ〜

直前にヒットした「心の旅」のポケットにつめて連れ去りたかった愛の表現と共通して
同じ財津和夫の作詞かとおもわれがちですが、「夏色」は松本隆の詞なのですね。
73年には「はっぴいえんど」は解散していたとはいえ9月に再集合コンサートがあったり
していますから、松本隆の職業作詞家キャリアの中でも最初期のものになるのでしょう。
曲としては、サビもAメロもまったく同じコード進行ながら、動と静でがらっと曲調が
変わるので単調さを感じさせない、ひと夏の豊かな経験を暗示している気がします。



VOL.816 * 2023/07/13


「ギヴ・ミー・ラヴ」 ジョージ・ハリスン

50年前の夏に高校三年生だった私は理数科の無い受験コースへ逃避して、それでも
「関関同立」など名門私立文系を目指して勉強していたと思われます。聴いていた音楽
で記憶にあるのは、金子光晴の肖像がジャケットを飾った友部正人のLP「にんじん
ぐらいなのですが洋楽で一曲選ぶとすればジョージの表題曲です。彼の最初のソロヒット
「マイ・スイート・ロード」もフィル・スペクターによる豪華なサウンドが耳に心地良かった
のは確かですが、"Living In The Material World" というアルバムからカットされたこの曲
は彼の精神も音楽もより深まった内容を感じさせます。時代背景は、この年の春に
ベトナム戦争がようやく終わったのですが、9月には南米チリで恐ろしいクーデターが
起きています。先日のNHK100分de名著「ショック・ドクトリン」の番組で改めて衝撃の
歴史が語られました。私は翌年に五木寛之が小説新潮に連載した「戒厳令の夜」で
感銘を受けて友人たちに薦めたりした記憶もあります。50年後にナオミ・クラインの
分析に接して警戒し続けるべきことを自戒しました。ジョージの祈りが背後で響きます。
♪Give me Love, Give me Love, Give me Peace on Earth



VOL.815 * 2023/06/17


「なにごとも反武器・減武器で」

水曜日に起きた自衛隊の射撃場における乱射事件は衝撃的でした。土曜日の朝に
ゴンチチのラジオを聴きながら思いを巡らすと、やっぱり反武器・減武器を願うしか
ないとの思いが強まりました。そもそも任官前の候補生に実弾射撃の練習をさせる
必要がどこにあるのでしょうか。そこを問題視する声が少ないようなのが変です。
自衛隊内部に「有事」に際して臨時に民間人を集めて「兵力」を速成する意図が
あるのではと疑います。鉄砲を持った歩兵の数を有難がる戦国時代以来の伝統が
残っているならこの際きっぱり意識を変革すべきです。百人の歩兵と百機の軍用
ドローンが対峙したら結果は明らかでしょう。報道によれば政府のほうでも強化すべき
技術分野として無人化やサイバー防御を挙げているようですが、研究開発の前に
現有の部隊編成を根本的に考え直すのが先決なのは明らかです。陸上の任務に
ついては国民の保護に最も役立つ災害対応を主任務に体制を組むべきでしょう。
読み返してみると当欄では2015年のIS人質事件の時に「反武器しかない」とか
テロよりも武器を憎む」などと書いていますが、再度願いたいと思います。
ウクライナでは世界のあちこちから武器弾薬が集まって延々と戦争が続いています。



VOL.814 * 2023/05/22


「今月の新書 講談社が豊作」

もうずいぶん長いことネット上の仮想書店「白川書肆」を細々と営んでおります。
ジャンル別にノンフィクションの文庫と新書をテキストデータのみの羅列として
毎月、本を積み重ねております。今月の新書の作業中に興味深い新刊が講談社の
3シリーズに集中していることを知り、どうしてもいち早くお知らせしたくなりました。
ナルコスの戦後史 ドラッグが繋ぐ金と暴力の世界地図 (講談社+α新書)瀬戸晴海
アジアや米大陸の奥につながる闇の通路と世界の反社の実態を「マトリ」の著者が明かす
DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこに(ブルーバックス)稲垣史生
深海は未知の多い世界だがさらにその地下に、豊かな生命圏が在ると信じられますか
時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙(ブルーバックス)B・グリーン
宇宙の終わりは時間の終わり。宇宙における生命と心という現象も存在しなくなるのか
日本の死角 見えていない日本の謎と論点(講談社現代新書) 現代ビジネス編
例えば地方で拡大する「移動格差」。Uターンすらしない若者が社会の風通しに悪影響
「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 (講談社現代新書)辻田真佐憲
ともすれば「美化」と「否定」のために都合よく語られがちな「戦前」を実証で解き明かす
今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書) 畑中章宏
村落共同体は思いのほか外界と行き来し流動的な生活文化を導入する合理性もあった
思い出せない脳 最新脳科学が明かす記憶のミステリー(講談社現代新書) 澤田誠
思い通りにならない記憶のメカニズム。脳の「いい加減」さが人類を進化させた?


       

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VOL.813 * 2023/04/27


「マネー・マネー・マネー」 ABBA

1977年の今頃、大学四回生の私は本来なら真剣にするべき就職活動というものを
まったく舐めてかかっており遊び呆けていました。国文専攻のクラスということもあり
周りの多くは教職を目指す者が多く、早々に選択肢から教職を除外した私は何を
するべきか悩みもせず、卒論だけは真面目にやっていましたが図書館には行っても
就職課には行かない毎日でした。結果として翌年新聞の求人欄で見つけた川西市の
楽器店に入ったものの「ブラックじゃ」と勝手に決めつけ四日で辞めてしまいました。
その後百貨店のアルバイトをしていた私を見かねて親が知人のつてで寿屋の中途
採用試験へ行かせます。その時期がちょうどレストラン「グルッペ」の店舗急拡大
と一致して同社への採用となり福岡市で将来の店長候補の実習教育を受けます。
グルッペは曲折を経て2002年に寿屋と共に消滅しますが、今やネットで検索しても
情報が残っていないようなので今回当サイトの記事「グルッペがあった」として私の
記憶と記録の範囲で記しておくことにしました。表題曲は福岡の老司店で当時店内
BGMに使っていたRKBサービスのテープに入っていて耳なじみになった一曲です。



VOL.812 * 2023/04/05


「夕凪のとき」 浅川マキ

オヤジノウタ世代の好むラジオ番組が今年に入ってずっと「追悼特集」だらけに
なっています。ジェフ・ベックをはじめとしてデビッド・クロスビーバート・バカラック
そのほかにも色々ある中で坂本龍一の訃報は、ワイドショウやクローズアップ現代に
まで取り上げられています。長い「癌との闘い」で苦しまれた様子が痛ましいです。
実は坂本さんの作品で特に思い入れのあるものはないのですが、彼がオルガンで
参加した70-80年代の曲については触れる人も少ないでしょうから書いておきます。
表題曲は1976年の浅川マキのアルバム「灯ともし頃」の冒頭曲ですがメランコリィな
オルガンが夜霧の街の景色にぴったりです。なお曲名としての「灯ともし頃」は、
LP「ブルー・スピリット・ブルース」に入った佳曲ですがオルガンは使われていません。
1984年は私が結婚した年なのですがその頃出た竹内まりや「ヴァラエティ」に
収められた「本気でオンリーユー」冒頭のメンデルスゾーン結婚行進曲フレーズも
坂本龍一演奏によるものです。自分の披露宴入場にも流そうかと企んだのですが
テープダビングの手間を惜しんだので流行の先端を行くことは叶いませんでした。



VOL.811 * 2023/03/31


「ザ・ベスト・シング・フォー・ユー」 バド・パウエル

九州の桜の開花タイミングが東京に後れを取るのも普通のことになり、平年ペースで
満開を迎えようとしています。恒例の窓から独り花見をするには絶好の薄曇りの空です。
今年はミツバツツジが窓からの景色に紫の彩を添えてくれているのも喜ばしい。
気分よく想像の翼を半世紀前に飛ばして見れば1974年の今頃は、高校を卒業して
念願の京都暮らしに旅立とうとしている頃になります。その頃よく聴いていたアルバム
「バウンシング・ウイズ・バド」からアーヴィング・バーリンのスタンダードである表題曲で
しばし想い出に浸りました。この曲のキーはCですが、出だしがB7で始まり、サビも
A♭からだんだんとCに収斂するという不安定から安定へ向かう流れが心地よいです。
ところで当時の世の中の大問題は「石油ショック」の大騒ぎだったことがNHKの朝ドラ
再放送にも出ていましたが、希望にあふれた旅立ちの記憶しかない私は、いかに
恵まれて守られていた立場だったかということを今さらながら痛感します。



VOL.810 * 2023/03/22


「優雅で魔術的な日本野球」

このコラムを始めて間もないころに第一回のWBCが行われて王貞治監督のもとでの
優勝に感激して、その話題を連続して取り上げたことがあります。あの当時はMLBが
本腰を入れていなかったこともあってキューバと決勝を戦ったのですが、今回のWBCは
アメリカとの頂上決戦を劇的な接戦で下すという最高の結果で幕を閉じました。
一点差の最終回に、それまで三番指名打者で出ていた大谷翔平が抑え投手として
マウンドに上がり相手の最強打者を三振に打ち取るというストーリーは、わざとらしくて
嘘くさい話ですが、何故か不思議な力によってあれよあれよという間に現実になりました。
これから先WBCという催しが続くとしてもこれ以上の結果は望みようがないですよね。
確かに大谷選手の超人的な働きは有りましたが、彼とトラウトの居るエンジェルスが
プレーオフにさえ勝ち上がれないことも事実です。今回の優勝は栗山監督のもと
不思議な求心力を見せたメンバーの集合による奇跡なんだろうなと思えてきます。
その力は不振に陥った主力選手を肝心なところで蘇らせます。第一回の時の
福留選手といい、今回の村上選手といい日本野球に起きるマジックが面白すぎます。



VOL.809 * 2023/03/14


「見るまえに跳べ」

高校生になって早々に大江健三郎の小説に嵌りました。「飼育」「死者の奢り」から
「セブンティーン」「性的人間」など新潮文庫を次々と読み進めていきました。母親が
横目で見て、気になったのでしょう。「あんた大江健三郎を読むのはまだ早いんじゃ
ないの。せめて石川達三ぐらいを読んでからにしなさいよ。」というようなことを言わ
れた記憶があります。石川の第一回芥川賞受賞作の「蒼氓」は近代文学の古典として
読んだでしょうか、さらに同時代的な作品で「稚くて愛を知らず」そして「青春の蹉跌」
を読んだときに、やっぱり大江のほうが自分にはしっくりくると確信した気がします。
大江の1958年の作「見る前に跳べ」は大学に入って京都の古本屋で買いましたが、
「青春の蹉跌」と重なる題材から、ロック音楽の感性が聴き取れて共感しました。
1970年に早川義夫がつげ春乱名義で書いた「堕天使ロック」の冒頭の歌詞から
岡林信康がはっぴいえんどをバックにして作ったLPに「見る前に跳べ」という題名が
付けられたことは知っていましたが、当然そのつながりに影響もあったのでしょう。
大江自身はこの題名の由来はW.H.オーデンの詩集からの引用だと後記で述べて
います。”Look if you like, but you will have to leap."が大江-早川-岡林を通じて
若い日の私に影響したことは間違いありません。実際のところは跳び損ねて、
奈落に落ちかけたりしながらもそこそこ充実した小市民の道にしがみつけました。
今朝の朝刊に池澤夏樹氏が寄せた追悼寄稿のなかに「ぼくたちにとって『戦後』は
ほどんど元号であり、大江健三郎はそこに君臨しないままに統治してきた。」と
あります。巨大な「知」の価値を後世に伝承する微力を尽くしたいと思います。



VOL.808 * 2023/02/26


「自由への道」
 バート・バカラック

ウクライナで戦争が始まって一年になり昨日のTBS-TV「報道特集」で取り上げられた
ウクライナ系ロシア人のノーベル賞作家アレクシエーヴィチの語った言葉が印象的だった
ので、大意を要約して書き記しておくことにします。
ソビエト連邦崩壊のあとに長い間抑圧のカゴに入れられていた国民は自由の扱い方を
知らなかった。自由を扱いかねて知らぬうちに「国家に管理されることを望む気持ち」を
心の奥に育て始める。テレビなどメディアがそれに呼応して皆が見たがるものを提示し、
やがて権力者の指さす方向へ誘導するようになり国民はいつの間にか再びカゴの中。

このような内容だったのですが、私たちも気を付けなくてはと考えさせられました。
表題曲は今月8日に94歳で大往生したバカラックの膨大な作品の中でも好きな一曲です。
原題は South American Getaway 「明日に向かって撃て」の中で主人公たちが追手
から逃れて南米へ逃避行するシーンのバックに流れた軽快な音楽です。



VOL.807 * 2023/02/13


「ダイアモンズ」 リアーナ

昨日から今朝にかけてのスポーツ観戦についてあれこれ感じたことを記しておきます。
日曜朝の8時半にスタートした西日本マラソンは、九州民放だけの放送でしたが故郷の
街の映像を楽しみがてら見ていました。強い旭化成の選手の上位独占かと思ったら、
終盤に初マラソンの早大生が抜き去って驚きました。延岡出身と知って将来の活躍が
楽しみです。午後3時半には競馬のGU京都記念。武豊がダービー馬ドウデュースを
駆って楽勝でしたが、エフフォーリアが直線で競走中止。心房細動とのことで復帰も
可能でしょうが、一昨年の年度代表馬だけに早めに種牡馬転身するのが良いかも。
一時間後には競輪のGV静岡記念。地元南関東勢が長いラインで優勢の中、抜けた
深谷と追走する郡司。先輩を立てたい心情が在りつつも「抜けるのに抜かないのは
失礼」と全力を出して優勝した郡司にはアッパレ。日本では月曜の昼過ぎになった
スーパーボウルの決着は第4Q残り十秒まで35対35の同点のところ、タッチダウンを
敢てしない選択をしたKCチーフスが決勝FGでイーグルスを破りました。昔の大統領
が野球で一番面白いスコアは8対7だ、といった伝説を連想させるような今日の
38対35の好ゲーム。できれば以前のようにNHK-BS1でも放映すべきだったのでは。
聞けば来年度からNHK-BSの再編で4K以外は一波に統合されるようです。
さらにサブスク大手の囲い込み競争に煽られてスポーツ中継の有料化は徐々に
進んでいきそう。タダで観れるのはギャンブル競技だけになるのも問題ですね。
表題曲はハーフタイムショーでバルバドス出身の母親歌手のリアーナが、
スタジアム中空のステージで堂々と歌い上げたコンテンポラリーソングです。
♪ So shine bright, tonight you and I. We're beautiful like a diamonds in the sky!



VOL.806 * 2023/02/08


「トルコ南部大地震」

二日前に起きたトルコ南部を震源とする大地震について、私が見聞きできる欧米の
TVニュースでは連日トップで取り上げているのですが、日本のマスメディアの扱いは
フィリピンで捕まった詐欺強盗を遠隔で指図していた犯人について、護送の生中継を
するほど重大ニュース扱いで、地球の裏側の大災害に対して冷ややかな印象です。
マグニチュード7.8は熊本地震の7.3に較べてエネルギー量は十倍近くになるらしく、
震源が浅いことや半日をおかずして同規模の地震が近くで起きたことにより、傷んだ
建物がとどめを刺されるように崩れたようで、凄まじい人的被害が起きたと思われます。
今回の被災地域を調べると、聖書に出てくるニネベやエフェソスなどの地名も見られ
歴史上の重要地域でもあり、シリアの内戦およびトルコとクルドの紛争に関しては
すでに戦争で疲弊した人々に降りかかった災厄の様相がうかがえます。日本の
緊急援助の組織はすでに動き始めているようですが、G7を控えた岸田首相には
この際ウクライナ戦争当事国軍に対して即時の停戦と被災地救援への転進を
呼びかけて欲しいところです。それくらいの世界的一大事ではないでしょうか。



VOL.805 * 2023/01/29


「国防力と国家暴力」

28日付の朝日新聞読書欄冒頭の「ひもとく」で憲法学者木村草太氏が紹介した
木庭顕氏の著作中の要約に「侵略国家は、日本の領域内では私的な暴力集団に
すぎないから、それを局地戦的に退けるのは(憲法)九条に反しない。」という
くだりがありました。では九条が禁じる武力は何かという場合に私が思いついたのは
「国家暴力」という概念です。私的暴力を制圧する警察を基本に日本の防衛は考え
られるべきだと思うのです。武装した犯罪者に対峙する警察は犯罪者の殺害でなく
生きて確保することを先ずは目指します。暴力団が重武装したとしても、組事務所に
打ち込むためのミサイルを準備したりはしません。いっぽう侵略者の殺害を狙ったり
侵略者の基地を越境して攻撃する装備は「国家暴力装置」にあたるので明らかに
憲法に反します。現在の地政学的不安感に乗じて憲法の制約を勝手に拡大して
「国防力」を「国家暴力」にさせてはなりません。帝国主義的時代の戦争論理を
廃れさせ世界的に国家暴力をなくすべく取組むことは、化石燃料の使用をなくす
取組と同様に求められる地球的課題です。平和憲法を持つ日本が率先して、
まずは隣人の国々と良好な関係を築き上げ、それを世界に広げるよう望みます。



VOL.804 * 2023/01/11


「実物志向だった」

TVニュースで驚いたのですが、トレーディングカードなるものに今どきの子供は夢中で
お年玉でふところの豊かになった小中、高校生までもが玩具も扱う量販店の開店前に
行列を作って人気カードの発売目当てに群がっているようです。希少アイテムには結構な
プレミアが付いたりするそうですが薄っぺらなカードにそれほど夢中になるとは理解し難い
ことです。私が中学生の頃にお年玉で喜んで買った物について久し振りに思い出しました。
それは三千から五千円ほどで買える「エンジン」でした。当時の二大メーカーだったOS
ENYAは調べたら今も健在でエンジンを売っています。模型用の簡易な構造ですがアルミ
合金製の光沢と重量感は少年の心をときめかせたのです。子供が買えるのは中でも
小型な1.5〜0.9立方インチの排気量のもので、ひまし油の燃料をニードルキャブレターに
注ぎ、バッテリーでグロウプラグを熱したうえでプロペラやひも付きのフライホイルを
人力で回して起動させるというものでした。財力のある大人はそのエンジンを模型に
付けてラジコンのプロポーショナルで操作する訳ですが、チューボーの身分としては
せいぜいスクラッパーなどという簡易な機体でエンジンを起動することが楽しみで、
しばらく熱中しました。やがてギターが弾けた方が女子にもてると気づいてしまった
ので、エンジンとは遠ざかってしまいました。資本主義の主眼が工業製品の価値から
情報の価値へと転じるにつれ、子供の憧れも実物から虚像へ向かう流れなのでしょうか。



VOL.803 * 2023/01/09


「 免疫格差 」

新型コロナ感染症が第8波と呼ばれるピークに差し掛かっているようです。九州の各県でも
今さらながらに感染者数の新記録が出たりしていますが、以前ほど大騒ぎにならず旅行も
外食も我慢しなくなっている様子も見られます。感染が身近になると罹った人の経験も
聞いたりして実感的に恐怖が薄れてきたこともあるでしょう。いっぽうでは高齢者や持病の
ある方を中心に死亡者が増えて直近一年間で4万人を超えたそうです。社会全体で所得の
格差が大きくなると同時に、人の免疫力にも格差が拡がっているように感じます。一つには
経済力があれば栄養的にも住環境的にも有利なこともあるでしょう。それ以外の因子を
推理して思ったのは、高齢者や持病のある方といえば当然日常的に服薬している方が
ほとんどでしょうから、それが免疫力に影響していることも考えられます。それと病院や
高齢者施設につきものなのが各所に設置されたアルコール消毒装置ですが、かえって
皮膚の常在菌によるバリアーを壊していないか心配です。うがいについても同様で、
上気道部の粘膜の防御力を損ねないように、私はなるべく唾液を飲み込む量と回数を
増やすようにしており普通の風邪さえここ十数年ひくことがありません。それと免疫を
左右する腸の健康維持のため、味噌、納豆、モズク類、キムチ等欠かさないのも秘訣です。
発酵食品を始めとする食による健康維持は、学んで面白いおすすめの読書分野です。

 


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