コラム


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みんなのうた 1997〜2011 DVD全5枚
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OYAJI NO UTA

by 安藤弘志

'04-6月分  '04-7月分  '04-8月分  '04-9月分   '04-10月分  '04-11月分
'04-12月分    '05-1月分    '05-2月分    '05-3月分    '05-4月分    '05-5月分

'05-下期分  '06-上期分

オヤジのうた曲名リスト


VOL.467 * 2006/12/31



「ディープと吉岡と」

2006年の年末。グランプリと呼ばれるレースで二つの歴史的なラストランがありました。
中山競馬場のファン投票グランプリ「有馬記念」ではディープインパクトが4コーナーから
直線にかけて豪快な「飛び」を魅せて、感動的な勝ち方をしてくれました。願わくは
種牡馬となったディープの子供が凱旋門賞での父の無念を晴らしてくれますように。
そして昨日の京王閣「競輪グランプリ」。神山雄一郎と共に競輪の一時代を築いた
吉岡稔真選手が、1着になった有坂選手の表彰式後に急遽引退の正式表明をして
ファンに別れを告げました。誠実な性格ゆえに、ここ数年多くのファンの声援に応えられない
状態が耐えられなかったのでしょう。ジャンが鳴ったあと涙で前が見えなくなったというのも
彼らしいのですが、できればもうちょっと堪えて、せめてバックを先頭でかける姿を
見たかったという気がします。後継というにはタイプが違いますが、今日のレースで
吉岡と連携を組んだ熊本の合志正臣選手が力を伸ばしてますので来年に期待することに
しましょう。NHKの中継で最後に映った京王閣競輪場の夕陽が印象的でした。



VOL.466 * 2006/12/23



「少子化の遠因」

この国の総人口が2046年に1億人を割り、その後急速に減少するという予測が報道された
ばかりですが。その一番の原因は格差社会による非正社員男性の増大と、逆に富裕な
正社員は労働時間が長すぎるという問題があります。ほどほどの労働時間とほどほどの
収入で、多くの若者が伴侶を探し、結婚子育てをしやすい身分になることが先決でしょう。
もうひとつの問題は、特に地方における結婚できない男性や離婚の増大が気になります。
ここで参考になるのが米国の開拓時代かも知れません。フロンティアーの担い手を産み出す
存在として女性を大切にすることが男の務めとされました。翻って私達の国の文化には、
親や年寄りを大切にせよという伝統は有っても、妻や嫁の役割を認めてふさわしい扱いを
する習慣に乏しい気がしますね。男の子が成長する過程で女性を大切にすることを教わったり
見聞きせずに育ってしまうと、適齢期になっても女性から結婚の対象として見てもらえずに
空しく齢を重ねる恐れがありますね。これは家庭や学校も含めた広い意味での文化の質の
問題ですが、端的な例として挙げたい物があります。それはパチンコ屋のつかうアニメ風の
女性キャラクターであったり、コンビニのガラス越しに並ぶ低俗な男性向け雑誌における
女性への性的扱いであったりします。地方のすみずみにまで浸透しているあれらのものを
大人らしい上手なやり方で排除できないかと、オジサンはひそかに考えたりするのです。




VOL.465 * 2006/12/15



サンダーバーズ・ア・ゴー

以前このコラムで提起した「平和省」の声も空しく、来春から防衛省になるんですね。
核保有国が増える中で、国軍どうしが宣戦布告をして対峙するような前時代的な戦争は、
いまや現実味が薄れてきています。「攻撃」の対語としての「防衛」の中身もここらへんで
根本から考え直しちゃどうでしょう。ここでオジサン世代から共感を広げたいアイデアを思い
つきました。自衛隊を「サンダーバード」と名称変更して改組するのです。もちろん英国TV
シリーズの国際救助隊を参考にするのです。考えても見てください。現実的な脅威の実体は、
不審船とか爆破テロ、生物兵器といったもの、あの国のミサイルにしたってサンダーバードに
出てくる悪党一味のやりそうなレベルでしょう。機動力の「1号」と臨機応変でコンパクトな
兵站力の「2号」があれば充分対処できそうです。もちろん不要な武器弾薬は大幅削減です。



VOL.464 * 2006/12/08



「X’マスケーキ」

この時期巷のいたるところで交される会話に、「クリスマスケーキ買ってくれんね」と
いうのがありますね。私もかつて流通業界の端っこに身を置いていた時分には、
なるべく避けてはいたのですが、この年末一大イベントに少なからず巻き込まれた
経験があります。そもそもの発信源は、クリスマスケーキの売上げが年度の数字に
大きく響く製菓・製パン会社とその販売店なのですが、それぞれの従業員に課せられた
個人販売目標は彼等の関係する業界の従業員へ飛び火します。例えばパン会社に
冷蔵庫を売った業者が5個頼まれて、さらにそこから冷蔵庫を運ぶ運送屋さんに2個
ノルマが課せられる。そしてそこの奥さんが妹に電話を掛けて1個買ってくれないかと
いう話になる、こんな具合です。まるで不幸の手紙、とまで言ったら徹夜で美味しい
ケーキを作るために苦労している人に悪いですけど。あの当時ノルマがさばけず自分で
3個程買って、しばらく朝メシ代わりにケーキを食べた我が家も、今ではケーキもチキンも
一切無いすっきり気分の良いクリスマスをここ数年過ごしています。23日だろうが
24日だろうが、うちは何時ものケーキしか売らないよという美味しいケーキ屋さんが
あったら応援したいと思う私はやっぱりヒネクレ者かしら。



VOL.463 * 2006/11/30




「サーカスにはピエロが」 ザ・ディランU

18歳のボクは中之島中央公会堂の横っちょの芝生の上で、両足を抱きかかえて
座っていました。それはコンサート開場の、もうずっと前からだった気がします。
約束していた友人のK子は、茨木に自宅のある同級の女子と連れ立って現れました。
今夜は京都の下宿には帰らずに彼女の家に泊めてもらうそうです。開場の時間が来て
赤煉瓦の建物の中へ入ると、コンサートのある大集会室は平べったい昔の講堂のような
つくりです。その客席の中程にボク達は腰掛けました。流れるバンドの軽快なひびき。
♪クルクル廻る回転木馬に 昨日の苦しみが しばりつけられて 流れて ゆくよ…
翌日ボクはK子をエキスポランドに誘って、回転木馬のようなものに乗ったのだったかも
知れません。かなり古い記憶になった1974年の11月30日の思い出です。



ディランUラストコンサート、チケット



VOL.462 * 2006/11/19


「教基法から削られるもの」

現行の教育基本法のうち、今進んでいる改正案で明らかに削除された部分(太字)。
第1条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義
    を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ自主的精神に充ちた
心身ともに健康な国民の
     育成を期して行われなければならない。
第3条(教育の機会均等) すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなけれ
    ばならないものであって
、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育
    上
差別されない。
  2  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者にたい
    して、奨学の方法を講じなければならない。
第5条(男女共学) 男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであって、教育上男女の
    共学は、認められなければならない。
第6条(学校教育) 法律に定める学校は、公の性質をもつものであって、国又は地方公共団体の外、
    法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
  2 法律に定める学校の
教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚しその職責の遂行に
    努めなければならない。このために、
教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられ
    なければならない。
第10条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行わ
    れるべきものである。
この部分を削ることが教育の向上にどうつながるのでしょうか。いじめや虚偽履修が
これでなくなりますか?まして単独可決してまで急ぐ理由は何なのか。
基本法は短いものです。ぜひ皆さんも原文を改正案と較べて読んでみることをおすすめします。



VOL.461 * 2006/11/13


「カササギの南下」

カラスを小ぶりにして、パンダのような白黒塗り分けのふさっとした羽毛をもつ鳥
カササギは北部九州の皆様には馴染みのある野鳥でしょう。もともと福岡県の南部、
筑後・柳川付近が生息の南限だった筈です。それが去年あたりから山鹿・玉名あたりで
見かけるようになり、先日は合志市の須屋でつがいを目撃したのです。熊本市鶴羽田町
から東へ数百米の場所ですから、今やカササギは熊本市に到達したと言ってよいでしょう。
もしかしたら、もっと前から見たよと言う方も居るかもしれませんが。それにしても、
北の留鳥が南へ下ってくるというのは、単に温暖化では説明のつかないほかの原因、
エサ、生息環境、天敵など、何の変化が有るのでしょうか。カササギは、大きな台風が
来る年には巣を低いところに作ると聞いたことがあります。彼達の予知能力による南下で
あれば熊本人には安心ですが。ただ、電気通信関係の皆さんにとっては、電柱の営巣
トラブルの心配もありますね。頭上でカチャカチャと鳴き声がしたら見上げてみてください。


熊本市近郊で見られたカササギの画像
カササギ 熊本県合志市須屋 2006 11 08



VOL.460 * 2006/11/05


「永遠の嘘をついてくれ」 中島みゆき

今年の9月におこなわれた「吉田拓郎&かぐや姫 Concert in つま恋 2006」については、
当日現場に立ち会ったものすごい数のオジサン、オバサン達をさしおいて語ることが
あるほど詳しいことは知りません。ただ、吉田の何度目かのステージの中ほどに出現した
表題曲が余りに気持ちいい曲だったので私も触れさせてもらいます。「この指とまれ」
「ビートルズが教えてくれた」「言葉」と続いた後でした。拓郎が表題曲を1コーラス歌った
次の間奏の中、あの「地上の星」を髣髴させる横顔がシルエットで現れ、実に存在感の
ある声で歌い上げてくれたのでした。過去に拓郎に提供した曲のセルフカバーということに
なるのでしょうが、何かお師匠さんが突然出てきた感もある威厳を帯びた声と姿に圧倒させ
られます。やがて「時代」を想わせる二声のコーラスで盛り上がるデュエット。
♪君よ 永遠の嘘をついてくれ いつまでも タネ明かしを しないでくれ
最後に体をそらせて客席に手を振り、コーラスの女の子の手を握って、1曲で消えました。
おそらく会場の観衆にとっても狐につままれたようなひと時のフィクションだったでしょう。



VOL.459 * 2006/10/29


西部戦線異状なし」 レマルク

岩波新書「昭和青春読書私史」の最後の章、著者の安田武が旧制五高の友人を
訪ねて熊本滞在中に表題の書物に出会うくだりを以下に引用します。
━それは、いつもの上通町の三軒の古本屋ではない。立田山辺へ散歩に出た折、
古本屋というより貸本屋といった、古雑誌を一杯に積み上げた小さな店であった。
暇潰しに足を踏み入れ、さっとひとわたり棚を見渡した私は、あっ、と心に叫び、
われとわが目を疑った。胸が高鳴った。客はもとより、店番もいないのに、何とはなし、
あたりを憚る思いで、棚の隅から、そっとその本を抜き取った。
エリヒ・マリア・レマルク『西部戦線異状なし』秦豊吉訳、昭和四年十月五日発行…━
実は我が息子たちも含めて近頃の若いモンが本を読んでないことを憂えていたのですが、
さらに世界史を学ぶ必要を知らない高校生や教師があまた居ることに驚き、そして、
嘆いてもはじまらないと気を取り直し、まずはこの一冊からでも図書館で探してみろよと
微力を承知で呼びかけることにします。古代〜中世は必要に応じてあとから見ることに
して、まず第一次世界大戦から現在の世界へ繋がる流れに目を凝らしてみろと。




VOL.458 * 2006/10/22


「イフ・アイム・ラッキー」 ジョニー・ハートマン

高校時代も後半になると秋口の感傷、それも人恋しさや、恋恋しさにとりつかれて
休日の午後などを悶々とした気分で過ごしたこともよくありました。今オジサンになった私が
あの頃に戻れたとしたら、もっと図々しく、そばに居て欲しい人に気軽に電話を掛けて
誘っているでしょうか。携帯電話時代の若いモンはその点のハードルはぐっと低くなって
いるみたいですが、昔は電話ひとつが大変だった。家の者に聞かれぬようにわざわざ
公衆電話に出かけてダイヤルをし、なおかつ彼女の家ですんなりと当人に取り次いで
もらえるだろうか不安になったり…。けっきょく勇気の出せなかった午後は独り街に出かけ
ジャズ喫茶でひとときを過ごします。恋愛の不自由は、心の悩みを芸術に昇華させる術
を身につけさせてくれる効用をもっていました。表題曲はハートマンの渋いヴォーカルと
イリノイ・ジャケーのサックスによる傷心への特効薬のような一曲。耳をそばだてて
歌詞を聴き取りながら「もしもおいら 幸運ならば 可愛いあの娘と 添えてるだろか」
へんてこな訳詩を考えていたことを思い出します。当時のLPのタイトルは「シャレード」、
ハンク・ジョーンズのピアノ、ケニー・バレルのギターも泣かせるインパルスの名盤です。



VOL.457 * 2006/10/17


「いじめの仕組み」

福岡県の南部、甘木市のそばに夜須町というのがあって、久留米から飯塚方面へ
車で行くときに何度か通ったことがありますが。そこが去年の三月に三輪町と合併して
筑前町という名に変わったことを今度の事件で知りました。担任の教師が主導するかたちの
いじめに遭った生徒が自殺してしまった悲しい事件です。わびる教師を罵倒する遺族の
気持ちは痛いほどわかりますが、視点を変えてみると教師の考えたことも想像できるのです。
社会的適応の未熟な中学生たちのフラストレーションが、やはり未熟な教師である自分に
向うのを恐れて、攻撃的性向をそらすためのスケープゴートを無意識に欲したのではないか。
学校からいじめを無くすためにはこの辺の仕組みを子どもたちにわかりやすく教えた上で、
ストレスの正しい昇華や発散を行うための知性への志向やスポーツの効果的な楽しみ方
へと導く必要があるでしょう。学校だけでなく、歴史上には国家的規模で特定の集団や
特定の外国人を標的にしたいじめや差別が在った事実ももちろん教えねばなりません。



VOL.456 * 2006/10/12


「おめでとうファイターズ」

「野球を愛している人々すべてを私は愛していますが…北海道の皆さんを一番愛してます!」
TVの前で祈るような気持ちで九州のホークスを応援したのですがそれが果たされずに、
それでも感動させられました。生まれてはじめての”胴上げ”という儀式の後、通訳を介しての
少しチグハグな北海道ニッポンハムファイターズのヒルマン監督のインタビューの直後に
これを書いています。とにかくものすごい二試合でした。優れた投手による息詰まるような
緊迫したイニングの連続でした。最後の幕切れのときのホークス選手たちの凄まじいくやしさ
もひしひしと伝ってきました。優れたミュージシャンの場合と同様に、優れた野球人たちの
世界にも国境を超越した人間同士の魂のコンタクトを感じて平和へ通底する幸福感のような
ものが感じ取れます。惜しむらくは、こんな劇的ドラマを放映できなかった地上波民放局
の時代遅れ巨人戦至上主義のていたらく。新庄クンも言ってたでしょうが、これからは



VOL.455 * 2006/10/10


「県内の街の声」

新聞の号外が出るような大きなニュースがあると熊本のローカルTV局が必ずやること。
下通りアーケードや交通センター前の通行人をインタビューして、県内の街の声として
ローカルニュースの冒頭で流すことです。実際何人に話を聞いているか知りませんが、
放送されるのはそのうちの三人ぐらい。世の中の支配的な論調に沿った内容でまとめられ、
大勢に合致しない声が電波に乗ることはまずありません。例えば「紀子様ご出産」の時に
「雅子様の心境は複雑では?」とか、「北朝鮮核実験」の報に「核抑止力を認める国家には
北を非難する資格がない」といった声が紹介されたら面白いのですが。「街の声」の三人の
ワクにこんな意見を採用する勇気はTV局に無いのでしょうね。でも一割の意見を三割に
表現する事よりも、七割の意見を十割に表現する事のほうが危険だとは思いませんか。
不完全で意味のない「街の声」、それでもどうしても放映したいのでしょうか。



VOL.454 * 2006/10/03


「ディープもファンも国際馬(人)に」

歳のせいもあって朝起きは苦にならないけど、夜の12時過ぎに起きているのは
いささかつらいです。しかし一昨日の夜は夢の凱旋門賞をナマで見られる喜びを
味わいました。結果はものすごく悔しい。でも、事前に一走していたらとか、ペースメーカー
を出走させていたらとか後だから言えることは関係者の皆様も同様の思いでしょう。
ぜひこの経験を生かして来年といわずしばらく欧州に滞在してでも、雪辱を期して欲しい
気持ちです。それとやはり生中継を実現していただいたNHKには感謝。苦言を呈する
とすれば、サッカーワールドカップのノリで騒いだり、商売した方々。中継映像には
載りませんでしたが、勘違いして日の丸の顔ペイントでロンシャンに乗り込み顰蹙を
かったツアー客が居たのではないか心配です。大レースに敬意を払った服装はもちろん
配慮すべきですし、世界のどの国のサラブレッドも先祖をたどれば三頭の始祖を
共有するというインターナショナルな感覚を若いファンも身に着けるといいですね。



VOL.453 * 2006/09/30


「集団的自衛」

やっぱり首相が代わった節目なので一言いっておきたくなりました。物言いは
柔らかだけど、やたらカタカナ語の多い空疎な中身だと批判の的の所信表明から。
「日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる
場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか」よく研究したいとの
ことですが…。前文と九条を読めばだれだってブッシュの対テロ戦争への参加が憲法違反
になることは明白でしょう。憲法の目指す「われらの安全と生存の保持(自衛)」とは、
「諸国民の公正と信義に信頼して」目指すとはっきり書かれています。アメリカが平和を
目指すと称してやっていることは、敵性国への不信と憎悪を根源としているではないですか。
9.11の被害者を上回る自国軍の犠牲者を「費やし」ているブッシュの政策に、安倍氏は
わずかでも共感できる部分を持つと考えているのか、はっきり尋ねてみたいものです。



VOL.452 * 2006/09/23


「少 年」 浅川マキ

「夕暮れの風が ほほを撫でる」と、ふと想い出す小さな歌。題名は?と歌詞を
たどってもすぐには出てきませんが。やがてどこからともなく「少年」の二文字が
頭をもたげてきます。オジサンが少年時代にこの曲に出会った頃にはごく自然に、
少年である自分がいつもの店に行って、仲のいい友達に会ったり、切なくなって
町で一番高い丘に駆けて行ったりする様を思い浮かべていました。今になって
聴き帰してみると、少年の存在に心をかきみだされる年上の女の独白として
イメージが喚起されます。浅川マキの歌にある感傷的なのどかさは、主人公がけっして
車を運転したりせず、歩いたり汽車やバスに乗ったりして動くことにも起因します。
話は変わりますが、小学生時分には「少年」という月刊誌(〜1968・光文社)があって
時々読んでました。今の感覚で思えばシュールな雑誌名にも思えますね。



VOL.451 * 2006/09/14


「秋はひとりぼっち」 ヴィグラス&ニューボーン

私の通っていた高校は田んぼの真ん中に在ったので、部活の後の帰り道など
初夏はカエル達の、初秋は秋の虫達の盛大な鳴き声の中を自転車こいで
帰ったものです。9月の今ごろだったら文化祭の準備に追われだした頃でしょうか。
あの当時の秋にまつわるヒット曲を思い出していたら三十年間忘れていた曲を
思い出しました。まあ、途中でも意識せずにラジオからメロディを聞いた可能性も
ありますが、それにしても実に久しぶりです。ネットという便利なもので調べてみると
原題は"FOREVER AUTUMN"。1972年にUSチャートで最高65位ですが日本の
オリコンでは2位まで行っています。マイナーの曲調といい、ロックとポップの
中途半端具合といい、日本のあの時代ならではのヒット曲は二度と戻らないでしょう。
私の通った高校も来春には廃校になってしまうようです。"Now you're not here"



VOL.450 * 2006/09/12


「カタストロフ911」

昨日は5年前の9月11日の出来事に関するTV番組が多かったために、一日中あの
ツインタワー崩壊の映像が色んな形で放映されていました。筑紫哲也さんも言っていた様に
私もあの日、自分がどんな風に画面を見つめて、それをどんな風に感じたのかを今でも
よく覚えています。半世紀近く生きてきたうちで世界史上もっとも重大な出来事が、
鮮明な同時中継で眼の前に展開された夜でした。不謹慎のそしりを恐れずに言えば、
事態が動いて新しい情報と映像が入る度に、どんなスペクタクル映画よりも興奮して、
少なからず楽しんでいたかもしれません。そして夜半過ぎには事態の全容がほぼ分って、
世の中の動き方が変質することへの不安も増し始めました。高校生時分によく読んだ
高橋和巳大江健三郎の小説を思い出し、久しぶりに「カタストロフィー」という言葉が
頭に浮かんだりもしたのです。あの事件が人類史上にどんな意味があるのか、はっきり
見えてくるためには今少し時間が必要でしょう。ただ、因果関係は定かでないのですが
私にとっては、あの頃を境に勤めていた大手流通企業の財務状況が急激に悪化し、
半年後には倒産・失業するという大激変がわが身に降りかかった事も感慨深いのです。



VOL.449 * 2006/09/03


「ソング・フォー・マイ・ファーザー」 ホレス・シルバー

家庭が崩壊したり安楽な場でなくなることにより、子供が自暴自棄な行動に走る事件が
世の中で頻発しています。日本の親達が確固とした規範を持てなくなった理由についても
色々考えたりしますが、もっと単純に「愛」のあるもので世の中の「毒」を薄められたらなあ
とも思うのです。例えば1960年代にポルトガル系の父を持つジャズピアニストが作った
表題曲を含むアルバムは、悩める若者に贈りたい1枚です。昔から優れたジャズメン達は
みな優しい顔をしていると思いませんか。それはジャズの演奏が常に共演者を思いやりながら
なおかつ、思いっきり自己の表現を行うそんな音楽だから。そして用いる音階に含まれる
ブルースの要素が、「ゆるす」ことによって悲しみを除き去る働きを含んでいるような気が
するのです。そんな気持ちでオヤジ世代も久しぶりにこの曲聴いて見ませんか。



VOL.448 * 2006/08/31


「ぜんざい公社」 桂 春蝶

街角で免許証を差し込んで年齢確認をするタイプの自販機を見ていて落語の
「ぜんざい公社」を思い浮かべました。甘党の店が国有化されるというSF的設定
のもとに、餅の入ったぜんざいを食べようとする男がお役所仕事の手続きの壁に
はばまれ大変な苦労をした挙句、生餅入りの甘くないぜんざいを食べる物語です。
行政事務の煩雑とタテ割組織の非効率を痛烈に皮肉った名作ですが今の人には
ピンとこない話になりつつあるかも知れません。そもそも何故ぜんざいなのかと言えば
昔あった「専売公社」とのシャレなのですが、半国営的企業をさす公社という言葉自体が
消滅しています。電電公社も国鉄も知らない世代にとってタイトルだけでは可笑しさは
解らないでしょうが、ぜひ中身を聴いてみてください。昔の役所の窓口で黒い腕抜きをして
座っていたら似合う人。「アバラカマキリ」の異名を持つ春蝶師匠の盤がおすすめです。



VOL.447 * 2006/08/27


「ネット・コンサバティブ」

去る8月15日の夜に放送されたNHK総合TVの討論番組で。スタジオに居る
著名人、一般参加者と共に、視聴者の意思も紹介しようと考えたのでしょう。
携帯電話による同時進行アンケートが行われました。質問は「あなたは今日の
小泉首相による靖国神社参拝に、賛成するか否か」だったと思います。アンケート
開始直後は逐一数字が紹介されていましたが、他の世論調査と較べても明らかに
異常な賛成比率の上昇につれて、アンケートの紹介は差し控えられたような気がしました。
昨日の朝日新聞で出席者の一人、保坂正康氏がこれについて、「賛成が70%を超えた
のには驚いた。若い世代の支持が多いともいう」と触れています。実はあの番組のさなかに
ネット掲示板「2ちゃんねる」上ではNHKでアンケート中という、投票を煽る書き込みが
相次いでいたことを私は知っています。もちろん掲示板は靖国の好きなナショナリスト
だけが発言しているわけではないのですが、彼等の発言力にはイラクの人質事件いらい、
読んでいて眩暈がしそうなほど圧倒的な勢いを感じます。ただし彼等ネット・コンサバは
現実の政治経済とのかかわりは薄く、選挙に行くかさえも疑問なところもあるのです。



VOL.446 * 2006/08/20


「渚のうわさ」 弘田三枝子

八月も二十日の声を聞くと風にも日差しにも、どことなく絶頂を過ぎた夏のけだるさが
感じられます。この季節は昔からポピュラーソングライターの創作意欲をかきたてるらしく
洋楽邦楽を問わずにあまたの名曲がうまれていますね。例えば三十分のDJ番組の選曲
担当者になるとしたらこのテーマで5曲、何を選びましょうか。パーシーフェイスのあれに、
サザンのあれ。山下達郎の次は、石川セリのあれも八月の後半の歌だよな。なんて考え出すと
だんだん夢中になって、ベタ版と別にマイナー版でもう一番組書き出したりし始めます。
そんな時ぜひ入れて欲しいのが1967年の表題曲。橋本淳の作詞、筒美京平の作曲です。
♪あなたのいない渚は とーてーもーさびしくて…出だしの四小節後半のマイナーコード
を聞くだけで軽やかでメランコリックな感傷が吹き抜けるのが感じられるでしょう。



「渚のうわさ」日本コロムビア シングル盤画像
「渚のうわさ」日本コロムビア



VOL.445 * 2006/08/15


「戦争で殺されるということ」

以前、自衛隊の小銃を作っている工場を取材したルポを読みました。印象に残っている
のは、工場の中に試射場があってその入口にイモの形をした石膏の塊があった話です。
粘土で出来た標的を小銃で撃ったあと、出来た穴に石膏を流し込んだものなのですが、
実に直径が20cm長さが40cmにもなるそうです。その名も「人体侵徹弾道テストによる
破壊状態見本」とか。小銃の弾丸は当たって貫通するだけでなく、回転したり頭がつぶれ
たりして体内でこれほどの破壊を行うよう工夫されています。映画でよくある腹をおさえて
うずくまる戦友に声をかけるシーンを現実に置き換えれば、即死した同僚の肉片や体液を
あびて声も出せなくなっている場面になるかもしれません。しかもこれほど衝撃的な死が
報道段階では戦略拠点の奪回を報じた後「数名の死者が出た模様」だったりするのです。
8月15日は戦争で死んだ者を思う日であると同時に、戦争で殺されるということに対して
現実的な想像力を働かせ、過去と現在の世界中の国の人達のことを思わねばなりません。
参考文献……朝日文庫「兵器産業」朝日新聞社会部 より4章 火器と弾薬



VOL.444 * 2006/08/03


「レバノン・シリアの憂い」

TV、新聞に代表される大衆メディアの報道バランスに疑問を感じることが多くないですか。
ジャイアンツの李選手のホームラン記録は過去の巨人軍選手の記録達成時に較べて
明らかに騒がれなさすぎだったし、ボクシング世界戦の亀田興毅の判定勝ちに対しては
支援するTBSと他のメディアの論調が大きく違うようです。ま、スポーツに関してなら
なんとか我慢もできるのですが、もっと重大なこともあちこちで日々発生しています。
災害時の報道に関する苦言は前々回のコラムで取り上げました。中東情勢はどうでしょう。
イスラエル軍が明らかに国連施設を狙って攻撃し、国連の暫定軍要員4人が殺されたこと。
"普通の国"になって憲法を変えて、軍事分野での平和維持活動への貢献を目指した場合、
日本の自衛隊員が4人の中に混ざることはありえたことです。今だってイスラエルとシリアの
境にあるゴラン高原には国連監視団の中に自衛隊員が40人います。そしてイラクでは
未だ航空自衛隊が米軍の支援を継続中。アメリカはイスラエルの戦争を支持しています。
ここいらへんの情報はワイドショーや社会面のニュースと違って自分から取りに行かないと
得られないけど大切です。CNNの見出しと国際ニュース解説を見比べるのもおススメ。



VOL.443 * 2006/07/30


「南国の夜」 大橋節夫とハニー・アイランダーズ

いいたくはないけれど、暑いですね。汗をかいたり、睡眠が浅かったりして毎日
回復しきれない疲労が溜まっていくような気もします。こういうときに利くのが
スチールギターによるムーディなハワイアンだと思うんですが、今時のワカイモンにも
効能はあるんでしょうか。最近ビアガーデンでも耳にしないような気がするので
ちょっぴり不安になったりもします。大橋節夫バッキー白片などはオジサンたちにとっても
はるか先輩の存在。和田博とマヒナスターズぐらいをかろうじて同時代に聞くことが
出来ました。純正のハワイ音楽を離れたところで独自に花ひらいた和風ハワイアン。
夏になるとビアガーデンに限らず、レストラン、商店街あらゆるところでかかってました。
これらがビリー・ヴォーン楽団ベンチャーズまでひろがって「昭和の夏」を彩ります。
表題曲はメキシコの作家による佳品。ドドドシーラードーシドシーラーファ…あれです。



VOL.442 * 2006/07/25


「地方TV局の皆様へ」

梅雨の最後の集中豪雨が今年は熊本・鹿児島県境から宮崎県境にかけて特に
大きな被害を及ぼしました。たとえ雨はあがっても酷暑の中での後片付けは、
肉体的にも精神的にも過酷でしょう。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
そんな中で感じたのは、またしてもTV局の出す災害情報の物足りなさです。
定時ニュース枠に加えてテロップ、スクロールでの表示でしたが、情報が時間・地域ともに
断片的で、リアルタイムでの全体状況の把握ができないもどかしさを感じさせました。
いちばん頼りになるのはレーダーの雨雲表示ですが、あんな感じで河川やダムの水位、
浸水地域が一目でわかる地図は出せないものでしょうか。視聴者からメールを受け付けて
毎時50分からの10分ぐらい記者や気象予報士が応答するような時間も設けるべきです。
洪水調節のためのダムの水門操作が実際にどのように行われているかということに関しても
現在は、ほとんど報道が無い。恣意的に洪水発生場所を選べる可能性さえあるこのことを
国交省まかせっきりにせず、何らかのクリティークを加えていく必要も強く感じます。
死者が出て、自衛隊も出動する出来事です。軍事評論家ならぬ河川ダム評論家を
育成して用語の解説や、状況の予測、避難指示の根拠など説明する必要があるのでは。



VOL.441 * 2006/07/18


「夏が来た!」 キャンディーズ

なんかNHK-BSをほめる内容つづきで恐縮なのですが、昨日のキャンディーズ特集も
よく出来ていましたね。シングルデビュー前の「歌謡グランドショー」バックコーラス時代や
スクールメイツでの紅白出場場面はNHKアーカイブからですが、TBSの「全員集合」、
テレ朝の「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」もしっかりとりあげ、最後の後楽園ライブに
いたるまで堪能の90分でした。オジサンは彼女らの追っかけでもファンクラブでもなかった
のですが、中学生から大学生までの時代、考えてみればキャンディーズと一緒に大人に
なったのでした。ひさびさに歌を聴いてもコントを見ても他人のような気がしません。
口ずさみましょう。♪緑が空の青さにかがやいて 部屋のカーテンとおなじ色になっても…



VOL.440 * 2006/07/13


「半島の未来への想像力」

北の国の権力機構内部で激変が起こり、金正日は亡命。代わった
暫定的指導者が軍の武装解除と、全政府組織が韓国政府の指揮下に
入ることを宣言。民衆レベルでは、なし崩し的に38度線の自由往来が始まる…。
1989年のベルリンの壁崩壊に似た風景を夢想することは馬鹿げたことなのでしょうか。
建前の世界の中で実務に当たる政府や外交当局者には出来ないことでも、
アジアの、特に日本の民衆が想像力を働かせるべきときが来ているような気がします。
南北国境の消滅という事態は、特に韓国にとって経済的社会的に大変な影響を
及ぼすことでしょう。そのとき日本の国と民衆がどんな形で手助け出来るでしょうか。
拉致問題の全面解決、軍事的脅威の消滅、このことだけとってみても
そうとうの代償を費やしても惜しくないと思いませんか。ただ、世の中には
無法者国家をいつまでも存続させることによって、あるいは「靖国」にこだわり
中韓との関係を悪いままにしておくことによって、国防予算や国防思想の拡充を
はかりたい人達も居るでしょう。彼等の抵抗をはねのける強靭な想像力が必要です。



VOL.439 * 2006/07/08


「遠い空の彼方に」 五つの赤い風船

♪いやな夢 あの国では戦争が 人々が子ども達が泣き しあわせどこにあるのだろう
リズミカルでメルヘンチックな表題曲の中でこのワンフレーズだけが暗転します。
昨日NHK BS-2で放送の西岡たかしをフューチャーした90分の中では、この曲のほかに
「まぼろしの翼とともに」「血まみれの鳩」など1960年代末のいわゆる反戦歌を彼は
(おそらく)当時と同じ気持ちをこめて歌ってくれました。2006年のこんにち、
「いやな夢 あの国」とくればミサイルで話題のあの国を皆思い浮かべるのでしょうが、
無法者の存在を騒ぎ立てて軍事思想の高揚を図ろうとする向きもある中で、
西岡さんの歌は抑止力なんぞに乗っかった「偽りの平和」にあきらめ暮らすことを
四十年も前からきっぱりと否定しているのです。オジサン世代の連帯の絆です。



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